2023.9.14 Thu

キャラクターインタビュー スペシャル企画

法医学研究員(メガネ博士)榊原良男(2)

『名推理犬と追いかけっ子』のシーズン2の制作が決まり、それに合わせて特番が組まれることになった。名推理犬のぽうの生い立ちと、それに寄り添ってきたメガネ博士の私生活にクローズアップするという内容になっており、熱狂的ファンをのぞき、初めて番組を見る人にも彼等の私生活の実態がどのようなものであるか分かりやすく再解釈する内容の30分番組となっているという。

これまでの番組の名場面はもちろんのこと、名セリフも特集している。名セリフについては犬のぽうよりも、それに寄り添う法医学者の博士の方が当然多くなるわけだが、ぽうの気持ちを代弁することもできる博士でもあるので、ぽう自身の名セリフももちろんある。

また、この番組を見て法医学者になりたいと思った小学生16人をスタジオに招待し、メガネ博士が法医学を教授するというサプライズ企画も盛り込まれ、小学生でしかありえない疑問に真摯に先生と生徒という形で問答するコーナーも設けられた。

今回も論文執筆や授業や、番組の打ち合わせなど隙間のないスケジュールの中、なんとか時間を作っていただき、取材ができることになった。(大人と子供の教育誌『さらだ』)

今回シーズン2制作決定にあたり、まず意気込みをお願いします。
今回は「笑うご遺体」でいきたいと思います。前回お話ししたように、この日本では「遺体は今日も泣いている」のです。その泣いているご遺体の皆さんに、ぜひその無念を晴らしていただきたい。まあご遺体は笑いませんが。もし笑ったら…ちょ、ちょっと怖いですね~。あ~、笑うご遺体って、ちょっとコンプラ的にまずいですか? 大丈夫? そうですか。良かったです。
今回の特番は初めて見た人にも、シーズン2から楽しめるように作られた番組ですが、簡単に『名推理犬と追いかけっ子』とは、どのような番組ですか?
え~、わたくしメガネ博士こと榊原良男は法医学者でありまして、仕事は主に死因不明で亡くなられた方の解剖を行いまして、その死因を探る仕事をしています。そうしますとやはり、事件がらみのケースがおおございますね。つまりこの方は何らかの事故で亡くなられたのか、それとも、ここが当然皆さんが関心を持たれるところでしょうが、何らかの方法で殺されたのか、これは殺人事件なのか⁈ 君は殺されたのか⁈ カッと見開いた目で凄惨な恨みの表情で、君が死の直前に見ていたのは殺人者なのか⁈ どうなんだ、君は殺されたのか⁈⁈ 「わん」。私はぽうの一声といいますか一鳴きでハッと我にかえります。あ~、すみません、ちょっと興奮してしまいました。え? もっと簡潔の番組の説明を? あ、要するにぽうが導いてくれるわけです。遺体の死因を究明するためには、その現場の状況も無視できないことが多いです。実際にその現場に出向いて行って、検証することもあります。そして様々な可能性を考えていくときに、私は時々ぽうの眼を見つめます。ぽうの無垢な眼を見ていると、あ~、今私は冷静さを失っているなとか、ちょっと興奮して先走ろうとしているなとか気付きます。そして私はぽうに問いかけます。あ? 長い? え~、えっと要するにぽうはしゃべりませんが、ぽうが導いてくれるわけです。ぽうが一声鳴いたり、ちょっと首をかしげたりすると私には道が見えてきます。ぽうがじいっと私の眼を見返している時があります。ぽうの眼に吸い込まれそうな気がする時です。ぽうが私に何か問いかけているようです。「何か忘れているんじゃないの?」。そのとき私の灰色の脳細胞のなかで何かがスパークします。どうしても長くなるので簡単に言うと、要するに、私が推理しているのかぽうが推理しているのか分からなくなる番組なんです。
犬が推理するということで子供に大人気なのですが、原案を作られているわけですが、なぜ推理するのが犬だったのでしょうか?
え~、犬は3万年前から人間と仲良しになりました。人間にとって最初に家畜化された動物です。犬から見つめられることで飼い主のオキシトシン分泌が増加することが報告されていますが、このオキシトシンこそが、人間のお母さんと赤ん坊の間の絆形成にかかわるペプチドホルモンなのです。つまり犬と人間の絆は、お母さんと赤ん坊の絆に匹敵するものなのです。ちょっと感動しませんか? それに比べると、猫とコンビを組んで推理する名探偵って、イメージがわきにくくないですか? ん~、そうでもないかな? 長靴をはいた猫ちゃんとかいるし。しかしまあともかく、犬の祖先である狼は群れで狩りをするために、お互いの意思疎通とか、チームワークの能力があります。猫は祖先が単独で狩りをするヤマネコなので、そのような能力がありません。そういうことがまずひとつございますね。それとあと大事なのが、嗅覚です。犬は嗅覚に優れています。動物はたいてい嗅覚が発達していますが、やはり、嗅覚といえば犬ですよね。推理にとって必要なのは、観察力と想像力、そして嗅覚です。だからこそ、名探偵の相棒に最もふさわしいのが犬なのです。犬の次に家畜化された動物として、牛がいますが、牛を連れた名探偵って面白くないですか? シュール? 現場に急行しようにも牛だけに牛歩ですっ! とか。失礼しました。
いわば、シャーロック・ホームズにおけるホームズが犬のぽうで、法医学者のメガネ博士が、ワトソン的な立ち位置になると思いますが、メガネ博士から見て、ぽうは本当に名探偵ばりの明晰な頭脳を持っているのでしょうか?
あ、わ、私の方がワトソン君で、ぽうのぽうが、いや方がポームズなんですね? あ~、いや、そうです。その通りです。ぽうの頭脳は驚くべき優秀で明晰な頭脳です。本当に言葉がしゃべれたらなあと、と思いますよ。ぽうが言葉をしゃべれたら、多分何かの分野でノーベル賞を取ったでしょうね。
日常、この架空の物語の中で、ぽうと博士は様々な事件を検証し、真実を追求していくわけですが、物語ではメガネ博士は法医学者でぽうは飼い犬です。物語の私生活にスポットライトを当てるわけですが、メガネ博士は純粋にご自身をモチーフにしていますか?
その通りです。ここで描かれているのは、まさにぽうと私の真実の物語なのです。
子供たちや視聴者からのお便りもかなりあるそうで、ぽうは何歳なのか。ぽうが事件を解決したら。どんなご褒美が博士からもらえるのかといった質問もあるようですが、そのところいかがですか?
ぽうは3歳なのですが、あまりに名推理をしたときはその頭の良さに対して、「ぽう、君は本当は3歳ではなくて3万3歳なんじゃないの?」なんて言っちゃいます。するとぽうは、喜んでワンと鳴きます。ご褒美にあげるのは、ぽうの好物の井村屋のあずきアイスです。ぽうは少し溶けかかって柔らかいのが好みのようです。私も一緒に食べます。私は固い方が好きなので、ぽうの分だけ先に冷蔵庫から出しておきます。
特番では、スタジオに実際小学生を招きましたね。やはり、子供は大人にない、疑問や思いがいっぱいあると思いますが、実際スタジオに呼んだ子供たちはどうでしたか?
子供たちの発想は素晴らしいですね。ぽうと一緒に金魚すくいをしたら楽しいでしょうかという質問がありましたが、まさに斜め上を行くというか、何を考えているんでしょうかね? あ、それと、ぽうは売ってませんから。
法医学の場合、事件の真相を推理するというわけではなく、遺体に残ったメッセージを解読していく作業になると思いますが、法医学者になりたいとスタジオに集まった子供たちは、法医学者になれそうな資質はありましたか?
みんな好奇心いっぱいでしたから、なれますよ、法医学者でもなんでも。受験勉強とかして好奇心をなくしてはいけません。成せば成る、ですよ。ね。成さねば成らぬ、何事も。ナセルはアラブの大統領ってね。はっはっは。は…。次の質問に行きましょうか。
かいつまんで、どのような法医学の講義を子供たちにしましたか?
まずは観察ですね。伝えたいことはたくさんあるのですが、子供たちにはまずよく見ろということを伝えました。まず皮膚と、それから目ですね。目を見ろと。その後の解剖の話は次の段階として。とにかく最初は見えるものを見ようと話しました。見えるものを見ろと。
その講義の子供たちの反応は様々でしたか?
いや~、みんな面白がってましたね。その場にご遺体はありませんから、お互いの目を見たりしてね。そしたらどうしても笑ってしまいますね。先に笑った方が負けとか。にらめっこじゃないんですから。
男子と女子では考え方に違いはありましたか?
う~ん、やはり男子は科学的な推理に興味を示しますかね。女子はやはり、どんな人間関係があったかとかに興味を持つ傾向があるかもしれません。でもみんな同じですよ。
子供たちは、番組のどのようなことに共感して法医学者になりたいと思ったのでしょうか?
「遺体は今日も泣いている」から「笑うご遺体」へということを強調しましたせいか、私も遺体を笑わせる法医学者になりたいと言う子がいましたね。ちょっと違うかなとは思いました。言わなかったけど。
つまり、端的にぽうではなく、メガネ博士の方に興味を持った子供たちということになると思いますが、そういう子供は全体から見ればやはり少ないですか?
まあやっぱりぽうが人気ですね。どこで売ってるんですかとよく聞かれますが、何度も言っていますが、ぽうは売ってません。
番組では、メガネ博士の私生活に迫ります。つまりは法医学者の日常生活です。それを簡単に教えてもらえますか?
日々是勉強です!って言うほどのことはありませんが、まあできるだけ現場に行くように心がけていますね。だからまあ普通の人が行かないようなところによく行くことになっちゃいますね。
法医学者はやはり医者の中でも、相当特殊な部類になるということですね? メガネ博士はやはり仕事に追われる日常生活なのでしょうか? たまの休日はぽうと何をしているのでしょう?
ええと、そうですね、ぽうと会話というか、まあ言葉は使いませんが、やり取りの練習をしていますね。
この番組を見ればわかりますが、休みの日でも、ぽうが事件を嗅ぎつければ、もう話が始まって、慌ただしい展開になっていきます。結局事件を目の当たりにして、ぽうの推理をメガネ博士が読み解き、事件を解決していくわけですが、本当に現実の話だったら、メガネ博士は休む暇がないですよね?
まあ事件はいつ起こるか分かりませんからね。でもなぜか1週間に1回事件が起きるんですよね。一度リアリティ追及で、事件が起きたという電話がかかってくるのを、電話機のところで延々待っているというのをやったことがありましたが、評判は悪かったですね。当然ですね。
でも、推理小説のように事件が起きれば、必然的に動かざるをえなくなる。このドラマ仕立ての番組では、事件の被害者の遺体も解剖していくわけですから、普通の推理ドラマより、一歩踏み込んだ内容になります。ただ、子供向けではあるので専門的になりすぎないように配慮されてるわけですが、監修もされていて、そこのさじ加減に苦労はしませんでしたか?
いや~苦労しますね~。だからタモリさんはえらいと思いますね。地質とか地層の難しい話をして、誰にでも楽しめる番組にしているのだからすごいですよ。
名推理と法医学の科学的検証により、被害者が語れなかった声が浮き彫りにされていくわけですが、そこに法医学のキモがあるということなのでしょうか?
「笑うご遺体」というのはさすがに言い過ぎかもしれませんが、笑い声とまではいかなくても、ご遺体の語る声が本当に聞こえてくるような気がする時がありますね。鳥肌もんですよ。そこがキモですね。鳥肌のキモ。
法医学者の実際の仕事は推理して事件を解決する職業ではない。番組では、ぽうとメガネ博士が協力して事件を解決するので、それを混同してしまった子供もスタジオにいたんじゃないですかね?
そうですよね。名探偵コナン君みたいな感じで思ってる子は多いですね。
推理もしたかった子供たちに、あえて法医学者として言えることはなんですか?
いや、推理は推理なんですよ。でも大胆で華やかな推理ではなく、地道で地味~な推理ということですね。そう言うと受けは悪いですが。
ぽうの人気は凄まじいものがありますが、名セリフでランキングの高かったものを教えてください。
「博士、何か忘れていませんか?」、「博士、何かが欠けていませんか?」、「博士、何か声が聞こえてきませんか?」、まあ心の声ですけど。
また、同様にメガネ博士の名セリフも教えてください。
「私の目はドーナツの穴か!」、「私の耳は餃子の皮か!」、「私の鼻は二つの穴か!」。全然名セリフじゃありません。
これは子供たちにオフレコですが、架空の物語のメガネ博士の年収はいくらくらいの設定ですか?
え~と、犬を飼うのはお金がかかりますから、健康保険とかないので病気とかすると急な出費がかなりかかるので、設定としては1000万超ですね。でも実際の大学の給料って安いですから。
深夜の時間帯に放送され、異例の人気を博してますが、目指す視聴率はどれくらいですか?
う~ん、視聴率ってよく分からないですね。深夜枠だとどのくらいで高視聴率というのですか?
シーズン2となれば、まだまだ先があるかもしれませんよね? 今後の野望があれば教えて下さい。
まあ長く続けたいですね。火野正平さんみたいにいつのまにか長くなってやめられなくなってしまうというのがいいですね。あと、ぽうと二人で天気予報に出たいです。