時は20XX年の日本。人工知能が発達し、車社会は最新の技術により大きな変化を遂げていた。
街の車のほとんどはオートメーション化が進み、ナビゲーションシステムに行先を告げれば最短の道のりを計算し、目的地まで安全に移動することが出来るようになった。
つまりは、自分が運転しなくても良い時代になり、逆説的に言うならば、その完璧で安全なシステム構造の中で、自分で運転免許を取得し運転する者を、交通事故を起こすリスクのある異分子として世の中は警戒感を持つようになっていた。
世の中の民間の教習所は時がたつにつれ営業をやめることが多くなり、また、国営の教習所はほそぼそと営業する中で警察の厳しい管理下に置かれていた。そんなある日の国営の教習所で警察から抜き打ちのアンケートが行われることになった。
教習所教官 根津、通称大佐
- この教習所に勤めて何年になる?
- えー、25年ぐらいになりますかね。
- 毎年免許を持っている者だけが交通事故を起こしているが、それについてはどう思っている?
- 運転技術が未熟なだけです。そして、その運転手を生み出した教習所、教官に問題があると思います。
- ここの教習所では毎年何人が合格している?
- まあ大体、年間で言うと50人くらいですかね。
- ちなみにあなたは免許を持っているか?持っているのであればそれをどのように使用している?
- もちろん持っています。私は必要最低限で、買い物とか…
- 毎年各地の民間の教習所が営業を辞めていき、国営の教習所も少なくなってきているが、この教習所は安いのが有名でよく客が集まっているという、今後事業を縮小させるよう法律で取り締まっていくがそれについては?
- まあ、もちろん時代の流れはそうでしょうけども、私自身としては手動運転にこだわっています。まだA.I(人工知能)というものに信用が置けないので、手動運転の技術の高い者を輩出するよう努力したいと思っています。
- ここの教習所の経営方針は?
- 喝!
- ここから巣立っていく生徒には何を重点に教えている?
- 車の運転技術はもとより、人に対する思いやり、人に人間関係の大切さなどを教えています。
- 今年受験する人に問題がありそうなのはいそうか?
- 全員です。
- 車社会の世論についてはどう思っている?
- もちろん、ごもっともだと思っています。
- 手動運転の必要性とは何か?
- さきほども申し上げましたが、コンピューターに人間が負けるとは思っておりません。
- 教習所がもしなくなったらあなたは何をしていくつもりだ?
- 今は考えられません…
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