情熱刑事(デカ)または熱血刑事こと、隠密捜査五課所属の通称サイドステップ刑事。彼が仕事にかける情熱は隠密捜査五課でもピカイチ。
また、フットワークが軽く抜群なことから、管轄外の場所まで一っ飛びで全国を行脚することもあるという。
そんなサイドステップ刑事を一躍有名にしたのが千論島幽霊殺人事件である。
鹿児島県の千論島に密かに伝わる都市伝説。千論島の北にある市民グラウンドにサッカーのユニフォームを着た少年の幽霊が出るという噂が島の中で広がっていた。
それを確かめようと夏場になると島民のみなさんが肝試しに夜に出かけるということがあったという。
そんなある日、友達と肝試しに参加した木村弘(大学生)さんが、その夜、突然行方不明になり、翌々日、千論島の東の海辺で、サッカーのユニフォームを着ながら変死体で発見された事件が起きた。
この物理的にも奇怪な事件に千論島の島民は動揺し、不気味がられ、犯人は不明なものの、悪霊が起こした事件と信じる島民もいたらしい。
この事件の解決に自らが手をあげ、出動したサイドステップ刑事は、普段の陽気さとは打って変わり神妙な面持ちで事件現場に向かったという。
また、この事件にサッカーが絡んでいることにいち早く目をつけ。彼は幽霊が出る真相と、事件がサッカーに関係していることが事件の鍵を握っていることに勘づいたという。その事件について、詳しく聞いてみた。これは一般には表に出ない極秘内部流通の警察広報誌においてである。
- 幽霊が出るという迷信や非科学的なことについて、サイドステップ刑事は普段どのような見解を持っているのでしょうか?
- 直接聞いた時は「バカバカしい」と笑っていました。しかし、僕の上司の妹の麗さんの話では「夜中にトイレへ行けなかった」という幼少期の情報も入っています。
- この事件の幽霊の話についてですが、単なる噂話ではなく、有名な心霊スポットとして、雑誌やユーチューバーやテレビが取材にきたこともありました。これだけ、人の関心が集まる原因があったわけで、それに乗じて、地元の千論島の人からも噂だけではなく、実際に見たという人も出てきました。こういう証言は、具体的な証拠とはならないでしょうが、見物されたそうで、こういう噂の印象はサイドステップ刑事から見てどのようなものでしたか?
- 火の無い所に何とやらですよね。ただ、自分は現地では恐怖など無かったです。しかし地元の方々が口々に言うのです。「冷やかしならやめた方がいいよ」と。
- 特に少年少女との間で、サッカーのユニフォームを着た少年の幽霊がゴールを入れるところを見たら呪われるとか、段々話しが飛躍的になっていった傾向もあります。だから、今度どんな話が出てくるのか。という意識が自然に高まり、それを利用して悪ふざけする人たちもいたようです。犯人はそこに目をつけたわけですが、こういう愉快犯についてサイドステップ刑事はどのように思われますか?
- 愉快犯自体は全然ナシですよね。しかし話が広まるのは島だと特に早く、少年少女を責めることはできません。悪ふざけも、中々止めることはできません。しかし地元の方々が口々に言うのです。「冷やかしならやめた方がいいよ」と。
- この事件は、ある意味そういった愉快犯のした事件でした。ただ、これは被害者となった木村さんも、サッカーをやっていて、大学でも活躍していました。スポーツ選手は爽やかなイメージもありますが、体育会系なところもあり、様々なトラブルの火種も抱えることがあります。これは木村さんという優れたスポーツ選手を妬む犯人が起こした事件でもあり、サイドステップ刑事は、そういった状況を的確に判断しました。サイドステップ刑事もサッカーをされるということですが、この事件が抱える嫉妬とはつまり、どのようなものだとお考えですか?
- 「努力への嫉妬」ですね。才能へ嫉妬しただけでは事件まで発展しません。才能があり、努力をした人間がそれでも上を見たとき、努力に嫉妬するのです。ハッキリ言えるのは、怪我でスポーツがダメになったなどのドラマのような展開ではないということです。でなければ、あんな犯行現場にはなりませんから。
- 実際にこの幽霊が出ると噂された千論島のグラウンドも拝見されたわけですが、どのような印象を持たれましたか?
- 昼に見た時は、とにかく広くスポーツに適しているグラウンドで良い印象だけでした。しかし夜に再度見に行くと、照明設備の少なさもあってか「何か起きそうだな」という不安感がありました。噂も、こうしたところから出てきたのかもしれませんね。しかし地元の方々が口々に言うのです。「冷やかしならやめた方がいいよ」と。
- 幽霊など非科学的なことを信じてしまう周辺の人々についてはどう思いますか?
- 私はどちらかと言うと、信じています。「いない」というのは証明できるものではないからです。何かが起きた時に科学的根拠で「これは科学だ」とは証明できるかもしれません。しかし、幽霊というものは人間の感情から生まれたものですから、消せないと思います。
- ちなみにサイドステップ刑事は胆試しに行かれたことはありますか?
- あります。ふざけて心霊スポットに行っていたことがありました。当時は自転車で結構な距離を進み、真夜中に到着することも多く、それがまた恐怖心を煽っていました。とある廃病院に数名と行ったとき、やはり深夜に到着し、雰囲気がすごく怖かったのを憶えています。とは言え、何も起きず。医療器具などを不気味がって騒いで笑っていました。一緒に行った1人が、うっかりビーカーのようなガラス製のものを落として割ってしまいました。「パリーン!」と高い音が異様に鳴り響き、自然と笑うのをやめていた自分たちに、少し怖くなって帰ることにしました。その日ももちろんみんな自転車でしたが、私はチェーンが外れたためみんなに待ってもらっていました。チェーンがはまった瞬間、背にしていた病院の窓ガラスが一気に「バリーン!!」と割れました。全員が叫びながら自転車を漕ぎ始めました。私も少し遅れながらまたがる前に自転車を押してダッシュしました。自転車にまたがろうとした時、うっかり振り返った私の目に映ったのは無数の白い手でした。「戻っておいで」そう言われているような気がしてゾっとしました。その日以来、私たちは心霊スポットにも行かず幽霊の話はしていません。
- 私自身は霊感はないようですが、取材にきた人たちの話によれば、異様さは感じたみたいで、具体的な幽霊自体は撮影は出来なかったものの、火の玉のような不思議な光が映ったりしていて、まあ、普通のグラウンドと言い切れない側面もあったかと思います。夜になると街灯もあまりありませんし、暗くなります。犯人はそういった闇を利用したわけですが。サイドステップ刑事は霊感はありますか?
- 元々は霊感など無いタイプでした。今も無いかもしれません。人並みに恐怖心などはあります。でも霊感のある人って、完全な人型とかで見たりするらしいじゃないですか。それはまだ無いですね。でも、霊感が無いと思っていたり、信じていない人の前には、存在を示すために現れるらしいですけどね。
- 結局のところ闇に紛れて人に手をかけた事件であり。この事件は、一緒に肝試しに参加したサッカー部員によって行われた事件でした。行方不明を装い、探しにいくついでに木村さんを殺害した。同じサッカー部員だったにもかかわらずです。そうしたことは普通はありえないと思いますが、犯人の高田浩一についての印象について教えてください。
- 好青年、というのが第一印象です。事件のありえなさと同じく、こうした普通というか良い人こそ、衝動にかられることがあるんですね。他の事件でも似たケースがあり、やはり印象や見た目だけでは判断してはいけませんね。タップ踏んでもらえれば良い人か悪い人かは分かりますけどね。基礎ステップだけでも。
- 高田浩一は木村さんにレギュラーのポジションを奪われてしまっていたようですね。木村さんのサッカーセンスは抜群で将来を期待されてました。普通なら、それに負けじと切磋琢磨して行けばよかったのではないかと思いますが、どうしても勝てない選手だったようですね。それが動機であると高田浩一受刑者は自供しています。こういった心理は理解できますか?
- やはり「努力」の部分ですよね。才能に関しては、自供の内容以上に自分ですでに消化できているはずです。でなければそもそもサッカーなど続けられませんから。努力しても追いつけなかった、という心理に関しては理解できます。しかし追いつけなければ、それは努力とは呼ばないと思っております。まぁ私は大体すぐに追い越してしまうので何とかなっていますが。
- この事件のあと3年間はグラウンドが立ち入り禁止になり、さらに寂れました。廃墟のようになり、それでも、見に行こうという野次馬もいて、まだ心霊スポットとして、注目されましたが、そういう人がいることが問題になりグラウンドは取り壊しになり、更地になった後、お祓いもされて、木村さんの知人関係者と遺族意向もあり慰霊碑が立てられました。今は広大な駐車場となり、照明もついて、グラウンドや廃墟の面影はありません。この事件を担当したサイドステップ刑事として、何か、思いのようなものはありますか?
- 私は一度といいますか一時期見ただけですので、寂しさのようなものはありません。ただ、取り壊したりすると居場所が無くなった何者かが彷徨ってしまうというのを聞いたことがあります。人間と同じかもしれませんね。
- 結局のところ少年のサッカーの幽霊という根拠のない噂については、まだ都市伝説として島民の心に残っているようです。これについて、事件を解決したサイドステップ刑事として、少年のサッカーの幽霊とは一体なんだったのか。ご意見をお願いします。
- 虚像でしょうね。かわいそう、恐怖、不安、こうした感情からの産物であり、それもまた感情でしかないのでしょう。こうだったら怖いなというのも加わって、そうした噂話になっているのです。
- どちらにしても、そのような噂を利用した罪は重いと思います。ただの心霊スポットというだけで気味悪がれているのであれば、それはまだかわいいものですが、実際にそれを利用した現実があり、ただの都市伝説として話から、犠牲者の出た場所に変わってしまいましたから。サッカーのイメージについても悪い印象となってしまいましたしね。サイドステップ刑事は犠牲者の木村さんについて、何か思いのようなものはありますか?
- 木村さん個人というよりも、サッカーをやっている身として無念ではあります。木村さんのような選手なら尚更。特に足首が柔らかかったそうですから、将来の木村さんも見てみたかったという思いはあります。一緒にエラシコで遊びたかったですね。
- 今後、このような事件を回避することに重要なこととはなんだと思いますか?
- 噂を信じるな、というのは無理があります。なので、噂を聞いたときに自分の意見もハッキリさせておく、ということが重要です。今回なんかは、犯人や木村さんが噂を聞いたタイミング、それについて話し合ったタイミングがあったはずです。そこで信じる信じないどちらでもハッキリみんなが言い合っていたら、少なくても乗じた犯行にはならなかったのではないでしょうか。あとエラシコは1タッチ目より2タッチ目までの足首の返しが重要ですね。
- ちなみに刑事になって、様々な事件を担当されたと思いますが、一番厄介だった事件について教えてください。
- 海です。海は全て厄介です。直近すぎて詳しくは言えませんが、何より状況を整えるのが陸地とは雲泥の差があります。私は幸いにも肺活量が5500ccあり、3分間息止めが可能です。幸いでした。
- 刑事の仕事とは、つまり自分にとってなんだと思いますか?
- 「引き算」です。事件というものは必ず発生します。割り切れない事件も発生します。他の事件とも掛け合わさって、あとは自分の中で引いていくしかないのです。つまり、そういうことです。
- 事件がなく非番の日は何をしていますか?
- モノマネの練習をしています。
- 趣味はなんですか?
- モノマネです。
- 座右の銘はなんですか?
- 「他人のモノマネだけはするな」
- 刑事の昼飯は何を食べていますか?
- 寿司以外食べないようにしています。常に地球を感じるためです。
- 刑事になろうと思ったきっかけはなんですか?
- 父親がヤクザだったんで、反抗心ですかね。
- もし刑事になっていなかったら、どんな職業に就いていたと思いますか?
- ヤクザです。
- タップ刑事の中で一番タップが上手い刑事は誰ですか?
- フラップが一番ですね。何せ基礎ステップの最後ですから。
- これとは別に取材をしましたが、隠密捜査五課を纏めるシャッフルステップ警部はサイドステップ刑事から見てどのような方ですか?
- 髪の伸び方が異常なので、エロい人という印象です。他には特にありません。
- もし、若者が刑事を目指しているとしたら、何と言ってあげたいですか?
- 引っ叩いてやりたいですね。そしてもう一度手を振りかぶる。そうするとその若者は避ける。「ほらな、それが歴史だよ」そう言って抱きしめてやりたいですね。恐らく若者は泣き崩れるでしょう。そこで一句「若者よ 腹が減ったら 寿司か麺」
- 最後に、今後も市民の安全を守るため悪質な事件を解決していく思いについて語っていただけますか?
- 全力ということは必ず伝えたいです。しかし解決できない事件の方が現実は多い。市民のみなさんには、守られているという安心感と同時に守り合うという心も持っていて欲しいです。お互いに話すこと。つまり、トークです。居酒屋で飲んでいようが、電話をしていようが、その場でダラダラ話したりボーッとしていてはいけない。今、目の前にいる相手が自分の首を取りにきている。そう精神を研ぎ澄ませながら話し続けて欲しいと思います。基本的には街中でも、ボーッとしている人には喝を入れるようにしています。自分がボーッとしている時、必ずこう思うようにして下さい。「あ、今ボーッとしていたな」と…。