時は20XX年の日本。人工知能が発達し、車社会は最新の技術により大きな変化を遂げていた。
街の車のほとんどはオートメーション化が進み、ナビゲーションシステムに行先を告げれば最短の道のりを計算し、目的地まで安全に移動することが出来るようになった。
つまりは、自分が運転しなくても良い時代になり、逆説的に言うならば、その完璧で安全なシステム構造の中で、自分で運転免許を取得し運転する者を、交通事故を起こすリスクのある異分子として世の中は警戒感を持つようになっていた。
世の中の民間の教習所は時がたつにつれ営業をやめることが多くなり、また、国営の教習所はほそぼそと営業する中で警察の厳しい管理下に置かれていた。そんなある日の国営の教習所で警察から抜き打ちのアンケートが行われることになった。
教習所副教官・綾瀬、通称少佐
- この教習所に勤めて何年になる?
- 勤めて3年半です。3年半っていっても、3年半前はここの教習所に通っていたので…やっぱり3年半ですね。
- 毎年免許を持っている者だけが交通事故を起こしているが、それについてはどう思っている?
- そうですね。みんな下手ですね。それは事故を起こされる側は免許を持っていなことが多いわけですけど。免許を持っている持っていないでそのように考えることもないのかなと思いますけど。
- ここの教習所では毎年何人が合格している?
- この教習所では毎年50人くらいですかね。まあなんといいますか、運転免許を取りに来る人にもいろいろと適正というものがありまして、学科教習が上手な人もいれば、端的に言うと運転が下手な人もいまして、とはいえ根津教官が素晴らしい人格者で、なんというか皆さんを合格に導かれるのが本当に素晴らしいと思っているんですけども。
- ちなみにあなたは免許を持っているか?持っているのであればそれをどのように使用している?
- 免許証は所持しています。休日ドライブに出かけるのと、教習に使うのが主な用途ですね。
- 毎年各地の民間の教習所が営業を辞めていき、国営の教習所も少なくなってきているが、この教習所は安いのが有名でよく客が集まっているという、今後事業を縮小させるよう法律で取り締まっていくがそれについては?
- そうですね。経営が危うくなると私のお給料も危うくなるので、とても辛いなあと思うこともあるのですが、ほかが縮小していく中で、生き残っていくような戦略的なものを考える…うちはなんといいますか。根津教官が本当に素晴らしい人格者ですから、生徒は集まり続けるんじゃないかと思うんですけど。でも、そうですね、このままでは良くないような気がしますし…個人的には手動運転免許取得者輩出さえ続けられればいいと考えているんですけど。
- ここの教習所の経営方針は?
- 愛ですかね。
- ここから巣立っていく生徒には何を重点に教えている?
- 愛ですかね~。
- 今年受験する人に問題がありそうなのはいそうか?
- いえ、みなさん元気そうですし、頑張ってほしいなと思っていますけれど。
- 車社会の世論についてはどう思っている?
- 手動運転を取り締まることが強く叫ばれていて、基本的に下手な人は所持しないほうがいいと思うんですけど、なんといいますか、下手じゃない人は持ち続ければいいんじゃないかと思いまして。そういうこともあって厳しく取り締まっていくこともどうなのかなと思っていますけれども。
- 教習所がもしなくなったらあなたは何をしていくつもりだ?
- 日本中ドライブして旅をしますかね。
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