2023.3.30 Thu

キャラクターインタビュー スペシャル企画

本部長 赤ん坊

身代金目的の誘拐事件は戦後になってから未解決事件となったのは8件のみとなっているものの、年間の行方不明者は8万人とも言われており闇は深い。誘拐だったのか、それとも失踪や蒸発だったのかというくくりはあるものの、突如所在不明になる事件は毎年沢山起こっている。

所在不明になり、それが身代金目的の誘拐だった場合の警察組織の動きは優秀そのものではあるが、誘拐された人質にとっては命の危機であることに間違いなく、犯人と警察組織のやり取りは、非常に緊迫した中で行われる。

隠密捜査五課の本部長。通称赤ん坊は、身代金目的の誘拐事件を何度も解決してきた凄腕の交渉人でもあり、彼に救われた命は指では数え切れないほどいるという。また、隠密捜査五課に所属する人員は、ほかの課にはいない特殊能力を備えており、その特殊能力については厳密な機密事項とされていた。

本部長赤ん坊の交渉術は魔法とも呼ばれることもあり、凶悪な誘拐犯の心理を巧みに把握し、人質の命の危機を回避してきた。また、過去の経歴として心理学の博士号も持っており、研究者の道もあったというが、心理学を実際に良いことに使いたいという思いから、警察の試験を受けた。という逸話がある。

そんな本部長赤ん坊の若き時代。捨て身の人質事件交渉からのエピソードを拝聴する貴重な機会となり、スーパーネゴシエーターとして活躍。その能力を遺憾なく発揮し、世間から賞賛を浴びたテクニックについて今回特別に機密事項スレスレの質問に答えていただけることになった。

これは、近年高度化、専門化する人質事件を未然に回避するヒントとして広く周知するためとも言えるが、犯人との心理戦に勝つための手段は、こちらが想像する以上に緊張感と決断力、計算力、また、人海戦術によって人質の安否を確認し確保することが明らかになった。当編集部は、その他の取材者と共有しない独自の質問は3問までと規制はかかったのだが、それについて、ここに掲載することにする。これは一般に流通しない、警察広報誌においてである。

警察関係者の中で、魔法と呼ばれた誘拐犯への交渉術ですが、一部関係者は犯人を口説くと言われてますね。まったく見ず知らずの一度も会った事のない誘拐犯の心理を即座に見抜き、交渉を有利に進めるいわば、基本中の基本とも言えるテクニックと、人質の安否を確認し、その命を交渉によって守るということで、まず、犯人が絶対的に曲げない主張を、どう切り崩すのか、犯人によって異なる対応もあると思いますが、一般的な見解ではなく、ご自身独自のレトリック(方法論)があれば教えてください。
まあ、とにかく本日はわざわざお越し頂き、すんません。エラい、仰々しい感じになってますけど〜、まあ、ただ一生懸命犯人追って、周りの若いのにヤイヤイ言うてたら、いつの間にか本部長になってまして、特段特別な捜査も…何ですか?レトリック?みたいなもんも無いんですけども〜、何ちゅうんですか?人に寄り添う?っちゅうんか、イヤ、まあ、犯人の気持ちに寄り添うもヘチマも無いんやけども、やっぱり相手の気持ちに自分の思考を寄せてくと、見えてくるモンがあるんですよ。そこが大事やから!とは若いのにも言うてるんですが、口で説明出来るアレとちゃうんでね、まあ、よう見とけよ、みたいな感じでやってるんで、なかなか、人様に説明出来るアレと違うんでね、すんません。
これまで、沢山の人質を救出してきた実績がありますが、実際に人質となった人が、救出前にいわば犯人に恫喝されて言わされていたことと、実際に救出されて、解放されたあと感謝の気持ちを伝えることがあったかと思いますが、印象的なエピソードがあれば教えてください。また、人質が誘拐犯に恫喝されて言わされていたことについて、いつもどのように対応、心がけているかもコメントをお願いします。
そうですねえ、ん〜、色々あるからアレやけども、13年前の東京中野のカプセルホテル長期滞在人質事件。アレね、犯人の女に、人質の男が無理矢理「彼女と結婚したいから一緒にいるだけ」と言わされて、事件性が無いと主張させられてたんやけど、ようやく助け出したら、男が本気で「彼女の事好きになったから、結婚する!」ちゅうて。おいおいおいってな話しですよ、お前大丈夫か?そういうのストックホルム症候群っちゅう心理的なアレやから、また冷静になって考えや〜ちゅうてましたら、彼女の罪も軽くて刑務所入ったりもせんかったから、1週間後に結婚式やるっちゅう連絡来て。えええ〜っ⁈思って行ったら、むっちゃエエ式やったんですよ…。思い出の映像とかが、事件のニュースとかで、ちょっと変やったけども…2人して「本当にありがとうありがとう」って言うてくれるしね、よう見たら2人お似合いやし、ホンマ、人間はよう分からん事しよるよな、不思議よな…。
それに、その後に子供産まれて、ワシ、揃いのヨダレ掛けプレゼントしましてん、あ、コレ。今治のタオル地で、拭き心地最高。イヤ、ちょっと話し外れたか、すんません。
恫喝されて言わされる言葉も、犯人自らの言葉も、本音とウソが混じってますからね。まあ、心を澄ましてよう聞くと、本音のリズムが聴こえてきますよ。そのリズムを逃すなや!ちゅう事ですかね。
最後に仮に誘拐事件に自分が巻き込まれてしまった場合。自分がとるべき最善策があれば、それについて教えてください。また、誘拐時、交渉人と話す機会があった時、何が大事なのかについてご意見をお願いいたします。
自分が誘拐⁈そんなん、想像すんのもイヤですわ。でも、まあ、そうですね…泣きますよね…やっぱり。力一杯、全力で泣きますね。それが私の仕事ですから。…ちょ、何か、むっちゃ真面目に答えてしもて、今、私、恥ずかしいんですけど。勘弁して下さいよ、ホンマすんません。あとは…交渉人と話す機会があったら?…え?ん?アレ?それって、誘拐犯へのアドバイスちゃいますのん?イヤイヤ、そんなん、ウソでも言えまへんて。そんなん、たいがいにしとかな、ホンマに。