2023.4.13 Thu

キャラクターインタビュー スペシャル企画

詩を嗜む検事 古賀正志

検事の一般的イメージは、やはり正義の象徴であろうか。捜査を行い被疑者を起訴し、そして起訴した事件について公判に立ち会い裁判所に対して被告人の正当な処罰を求めて主張と立証を行う。そのような厳格な職務である。

だからといって検事だって、そのような職務に忙殺されるだけの生活ではない。趣味もあれば、休みの日もある。人間だから、どんな職業にもオンとオフがあるのだ。

検事の古賀正志は最難関国立大学の文学部を卒業している。小さい頃から詩や俳句に興味があり、学生時代に詩のバトルロイヤルで最優秀賞を受賞したこともある。詩は彼の人生観に多大な影響を与えたが、詩人として生きていくために、どうすればいいのか、かなり青春時代に悩んだという。そんな彼が選んだ道は検事をしながら、趣味人として詩を詠むことだった。

この選択を彼はほかの知人や友人や親に説明すると、首をかしげられることもかなりあったというが、検事という立派な職業に就くということは誰も反対しなかったらしい。ただ、詩を愛好する人が検事のような厳しい世界でやっていけるのかと、心配はされたようだ。

だが、彼の愛好する詩は激動の時代に生きた詩人ばかりだったという。彼は検事の仕事を実直にこなしながら、詩を詠み、そして投稿もしていた。

そんなある意味ユニークな人物にスポットライトが当てられる事があった。彼の詩が教科書に掲載されることがきっかけとなり、ニュースにもなった。

人は様々なことに興味を寄せる。検事の書いた詩はどんなものなのかと、意外性を持って注文が殺到した。

今回、この異色の詩人でもある古賀正志氏に検事だけではなく、詩人としてフォーカスし、インタビューをすることになった。これは一般には表に出ない極秘内部流通されている法曹界の広報誌においてである。

ご自身は詩人としてのキャリアが、検事をされているキャリアよりも長いと話されていたこともありますが、詩人から検事というわけではなく、検事も詩人も両立するというきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

太陽は照るよね
雨は降る
風は吹くのかな
雲は浮かぶものだ

彼らのあり方に憧れたのが始まりでした

太陽はなぜ照るのか考えたことはあるのかな
雨が降ることを止めようとしたことはあるのかな
風邪は吹かずに留まることを望むのかな
雲が浮かんでいると自覚したことはあるのかな

いいや在ることだけが
ただ在ることだけでそのものなんだ

そう気づいた時解き放たれた気がした

私は何で在るのか
私は何で在りたいのか

見えなくなることに怯えなくていい
触れられないことも寂しくはない

匹夫之勇
千変万化
泰然自若
一心不乱
みな平等に愛おしい

用意された道も
切り開く道も
私が歩くことに変わりはないのだから

だから私は
詩人であり検事なのです

ご自身がお気に入りの詩人は誰でしょうか?また、その詩人に影響を受けたとすれば、どのようなことだったか詳しく教えてください。

ホメロスには空想を学んだ
エドガー・アラン・ポーには解すことを学んだ
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテには厳しさを学んだ
ヘルマン・ヘッセからは風景を学んだ
ジョン・キーツからは志を学んだ
金子みすゞからは儚さを学んだ
ジャン・コクトーからは模倣を学んだ
エミリー・ディキンソンからは継続を学んだ
寺山修司からは独立を学んだ
中原中也からは切なさを学んだ
高村光太郎からは知名を学んだ
太宰治からは激しさを学んだ
ライナー・マリア・リルケからは規律を学んだ
種田山頭火からは放蕩を学んだ
ウォルト・ホイットマンからは逃避を学んだ
イワン・ツルゲーネフからは苦悩を学んだ
竹久夢二からは色彩を学んだ
杜甫からは勢いを学んだ
カレル・チャペックからは不思議を学んだ
北原白秋からは母音を学んだ
原民喜からは平和を学んだ
上田敏からは伝聞を学んだ
与謝野晶子からは決意を学んだ
島崎藤村からは破戒を学んだ
萩原朔太郎からは評価を学んだ
三島由紀夫からは活動を学んだ
相田みつをからは型を学んだ
まどみちおからはおおらかさを学んだ
宮沢賢治からは夜を学んだ
石川啄木からは哀愁を学んだ
谷川俊太郎からは言の葉を学んだ
俵万智からは味を学んだ
岡田斗司夫からは恋愛を学んだ
辻仁成からは息子を学んだ
最果タヒからは距離を学んだ

私の成分です
これからも増える

事件を立証していく職務は詩を詠むことに影響されることもあるかと思いますが、事件の真相と、詩の空想はまったく違う世界ですよね?いや、ご自身しか分からない何か共通したものがあるのでしょうか?それがあれば教えてください。また、ご自身にとって詩を詠むとは、人生にとっていかなるものなのか教えてください。
むかし晴々と覚めざめと静かな小谷があった
そこには誰の魂の住まうことはなし
みながみな 正しきを信じて戦に出向いたのだ
穏やかな目をした人々が視線を向ける
夜ごと居並ぶ壁色の物見から
段畑を下に見守ってくれる
あいだに日がな赤の陽射しも
だらりと寝そべっている
いまは訪う者誘う者みな口にする
その哀しみの谷では不安になると揺らいでしまうと
何もかもが落ち着かない
なのにその地の模様だけ
妙に静けさをたたえている
ああ木をそよがせる風もないのに
木はわななく 葉はさざめく
死期を悟った聡い列島のように
ああ雨を降らす雲もないのに
大気が震える生まれる前の爆発のように
そわそわと光が昇る
朝から夕べまで
目の前には一面の菫が群がり
さまざまな人の顔が不揃いに浮かぶ
思い出は絶え間なく変遷する
過去と未来から絶えず問われるは
そこに血が通うか否か
一面眺めてそよぐ
一面滴り揺れる