2023.8.17 Thu

キャラクターインタビュー スペシャル企画

パドルアンドロール刑事(2)

タップ刑事は休むことを知らない。パドルアンドロール刑事も、大食漢ではあるものの、そのエネルギーを全力捜査に集中させているという。また、彼の名を世の中のあまねく広めることになった事件がまた起きた。それは人気ユーチューバー失踪事件である。

この人気ユーチューバーの「ごはん。」さんはチャンネル登録者数が100万人を超え、動画再生数も12億回にのぼり、テレビや雑誌などマスメディアにもつどつど登場する人気タレントだった。

動画の内容は毎日食べる食事を、自給自足で作り上げ、完食するまでの過程を撮影したもので、その本格的な自給自足ぶりに圧倒される視聴者が続出し、これをきっかけに自給自足ブームが起きるなど社会現象を起こしたとも言われている。

それだけの有名人であり、多忙を極めていた「ごはん。」さんが、ある日。突然。意味深な配信をした後に動画更新が途絶え、行方不明となった。

これは世間にも記憶に残る事件となり、警察も捜索を開始したが、捜索の結果、静岡県の山林の中で遺体で発見されるという衝撃的な結末となった。

警察は当初は事件ではなく自殺として捜査をしていたのだが、ここで、パドルアンドロール刑事が手を挙げ、この事件に犯人が存在していることを宣言したのである。

今回はその事件について、パドルアンドロール刑事に取材することになった。取材現場では、有名和食料理店から配達されたばかりのほっかほっか大盛りの親子丼に箸をつけながら、そのほうが記憶が鮮明になるということだった。これは一般には表に出ない警察広報誌においてである。

ごはん。さんと個人的に付き合いもあったとされるパドルアンドロール刑事ですが、ごはん。さんの身近な人となりを改めて教えてください。
「食」を愛する人に悪い人はいませんよ。明るく豪快で良い人でしたね。嫌いな人はいないんじゃないかな?
社会現象も起こした人気ユーチューバーということでしたが、ごはん。さんのカリスマ的魅力とはなんだったと思いますか?
やっぱり、出来上がった料理が美味そうでしたからね。
自給自足ということでしたが、ごはん。さんの調理の腕前は一流で、調理器具も整っていました。この飽食の時代にあって、ごはん。さんが目指していた自給自足とはどのようなものだったと思いますか?
そりゃ、世界平和ですよ。
ごはん。さんが得意としていた料理の記憶があれば教えてください。
鶏の唐揚げです。あれは素晴らしいですよ。
ごはん。さんの事件についてですが、不可解な配信後の消息を絶ちました。実際その配信は事件性を含めて3億6千万回再生されています。この配信を当時見た感想はいかがですか?
ピンときました、私は。
不可解なというのはごはん。さんが、唐突にカメラに向かって話し始めた内容で、「僕には明日食べるごはんがない。そして調理ももうしない。全てがこれで終わりです」というメッセージでした。ユーチューバー引退をも匂わせましたが、なぜ、今なのか、不可解に思った人も数多くいます。普段の配信と違った、ある意味鬼気迫るメッセージでしたが、この直前の様子を交流のあったパドルアンドロール刑事は知っていたようですね?
知ってはいませんでしたよ、私も動画でおかしいなと確信しただけで。
この配信の一週間前、都内のスーパーで一緒に買い物をしたそうですね。ごはん。さんの現場は田舎であり、都内に来る理由は限られていたかと思いますが、その時失踪してしまうような様子は伺えましたか?
何度思い返しても、その時はいつも通りだったんですよね…。自給自足で賄いづらいチョコレートをね、久しぶりに食べたいって言うから一緒に買いに行ったんですよ…。
この事件の背後に真犯人が潜んでいたわけですが、警察は自殺の線から捜査を進めていました。ごはん。さんが書いた遺書のようなものが現場残されていたからです。しかし、後からこれは書かされたものだと分かりました。この遺書のようなものを実際に読まれた印象を教えてください。
私は当初からピンときていましたから、犯罪に巻き込まれていると確信したまでです。
その遺書に実は些細なダイニングメッセージがありました。よくある行頭だけを読むと別のメッセージが浮かび上がる。というやつです。そこには「私はかんねんした。あとを頼む」と記されていたと聞きます。これに当初気付かなかったのは真犯人のごはん。さんの元恋人ユーチューバー梨子(女性)さんです。梨子さんも有名ユーチューバーでした。梨子さんとも面識があったというパドルアンドロール刑事の梨子さんの印象を教えてください。
いわゆる、いけ好かない感じの女性でしたね。
梨子さんは自分を振った、ごはん。さんが許せなかったそうですが、世間的にもこのカップルの破局は週刊誌を賑わせました。破局の原因はごはん。さんが自分の自給自足を真に確立するため。という理由だったのですが、それまで公私で支えてきた梨子さんとしては、自分を全否定されたように思ったようです。ごはん。さんはやはり自給自足の道を究めたかったでしょうか?
そりゃそうだと思いますよ。彼は「食」を通して世界平和を目指していた訳ですけど、彼女は競争心が激しくて、かなり周りの評価を気にするっていうか…。動画も炎上する事がありましたし、世界平和を目指す彼とは違いましたよね。でも二人が出会った頃は、全然そんな女性じゃなかったそうですよ…。女性は分かんないですよね。
結局、梨子さんは、自分を否定されたという思いでショックで、動画活動がうまくできなくなり、また、週刊誌や、一部ネット上で叩かれて、辛い思いをしたようです。そして、梨子さんはごはん。さんを拉致して、心中しようと試みますが、結局、あの配信直後、二人は車内で揉めて、最終的にごはん。さんが自決を決意するに至りました。梨子さんをできる限り、傷つけず、この一件を自分の命と引換に収めたかった思いがあったようです。パドルアンドロール刑事は、このごはん。さんの真意をどう思いますか?
二人の「平和」が自決とは、むなしいですよ。
梨子さんは確かにごはん。さんに手をかけましたが、殺人というよりは、自殺補助の意味あいで逮捕され、現在も裁判で遺族側と争っています。ごはん。さんの思いは複雑にねじれてしまったわけですが、梨子さんをどうにか守ろうとしたごはん。さんの思いについて、見解をお願いします。
それはね…「やさしさ」じゃないし、「平和」をもたらす行動じゃないと、怒鳴りつけてやりたいですよ。もう遅いですけど。
やはり、ユーチューバーのように私生活を一面晒している人でも、世間には晒したくない事情があったと思いますか?
そりゃ、そうだと思いますよ。
また、梨子さんのように週刊誌やネットで叩かれてしまったユーチューバーについて見解をお願いします。
まずは、そういうリスクがある事を覚悟して公開する事だと思いますね。
生前ごはん。さんと親交のあったパドルアンドロール刑事ですが、この事件。ごはん。さんにとって、何が一番無念だったと思いますか?
一番守りたかった人を守れなかった事じゃないですかね。
また、亡くなってしまったごはん。さんですが、ごはん。さんの良いところはなんだったと思いますか?
あの明るさと豪快さと、やさしさですよね。
また、生前ごはん。さんの想い出のエピソードは何かありますか?
はちみつ採取に連れて行ってもらった事があるんですけど、防護服なしでやるんですよ。ハチに「少し頂きますね」と声掛ければ「いいよ~」って言うと言ってました。
ごはん。さんの動画は更新はされませんが、いまでも多くの視聴者が再生しています。その理由はなんだと思いますか?
やっぱり、出来上がった料理が美味そうだからじゃないですか?
心中未遂となった梨子さんについて、今もユーチューバー活動ができてはいませんが、彼女が、こうならずに済む方法はなかったのでしょうか?
そんな方法があれば、こうならなかった訳じゃないですか?難しいですよ~それは。
心中するという精神状態について見解をお願いいたします。
心が壊れちゃってるのに「一緒に」って…。強い意思を感じるので、その強さがあれば逆に、何とか乗り越えられたんじゃ?と思ってしまいますよね。
この事件は、悪意があったか。と言われたら難しい事件です。やむにやまれず起こってしまった事件であり、ごはん。さん自身の意思もあります。警察として、この割り切れない事件について、どう対応してきましたか?
割り切れない事だらけですからね、世の中。まあ、立ち向かうだけですよ。それしかないです。
ユーチューバーは人気商売だと思います。また、反響もリアルタイム。些細なことでも影響を受ける職業です。有名になればなるほど、影響も大きい。パドルアンドロール刑事はユーチューバーという職業についてどのような見解をお持ちですか?
個人でやっている人が多いけど、やっぱり危機管理が甘いし、色々晒してしまうと本当に危ないと思いますね。面白いチャンネルが多いし、私もよく観てるけど。ちなみに2023年の小学一年生の憧れの職業で、ユーチューバーは9位で、警察官は5位なんですよ。まあ、それがどうした?って話ですけどね。
もし。まだ、ごはん。さんが生きていたら。彼は今何をしたかったと思いますか?
鶏や豚、牛たちの事が気掛かりだろうし、畑に水やりしたかっただろうと思いますよ。
生前ごはん。さんと出会ったきっかけは?
食べるのが好きなもんで、彼のチャンネルをよく観てたんですよ。そしたらウチの近所の家庭菜園用のレンタル区画にロケに来るってんで、非番だったし観に行ったんですよ。で、意気投合して…っていう。思い出すとさみしくなっちゃいますよ。
パドルアンドロール刑事にとって、生きるとは、死ぬとは、どんなことだと思いますか?
諸行無常ですね。